新しい現場が決まるたびに、過去の似た工事の工程表を探して、日付を打ち直して、協力会社に合わせて組み直す。工程表づくりは、現場監督が事務所に戻ってから夜にやる仕事の代表格です。
「工程表 AI 作成」で検索すると、ツールの紹介や、ChatGPTに表を作らせるプロンプト集が出てきます。ただ、その多くは週休2日や雨の日、猛暑日といった、実際の工期を左右する条件を扱っていません。この記事では、国の工期の基準に沿った条件をAIに渡して、手元のChatGPTとExcelで使える工程表のたたき台をつくる方法をまとめます。
AIに任せられること・任せられないこと
先に線を引いておきます。AIは工程表を「ゼロから決める」ものではなく、骨組みと日付計算と抜け漏れの確認を肩代わりするものです。
| 作業 | AIに任せられるか | 理由 |
|---|---|---|
| 工種の洗い出しと順番 | 任せられる | 一般的な施工手順は得意。抜けの指摘にも使える |
| 日数の配分と日付の計算 | 任せられる(要確認) | 休日・予備日の計算は速い。ただし数字の誤りは起きる |
| Excelに貼れる形への整形 | 任せられる | 表やタブ区切りで出力させれば、そのまま貼れる |
| 現場固有の条件の判断 | 任せられない | 搬入経路・近隣・地盤・発注者との協議内容はAIが知らない |
| 協力会社の手配状況 | 任せられない | 職人の空き状況や材料の納期は人が確認するしかない |
| 最終的な工期の決定 | 任せられない | 契約上の責任を伴う判断 |
最後の行は特に重要です。2025年12月12日に完全施行された改正建設業法では、受注者の側からも著しく短い工期で契約することが禁止されました。AIが出した日数を確かめずに見積もりや契約に使うと、法令上のリスクを抱えることになります。
AIに渡す前に決めておく「工期の条件」
AIの工程表が使い物にならない一番の理由は、条件を渡していないことです。「木造2階建ての工程表を作って」とだけ頼むと、休日も雨も考えない、理想的な日数の表が返ってきます。
条件の決め方は、国土交通省の「工期に関する基準」(中央建設業審議会、令和6年3月最終改定)が参考になります。基準の本文では、工期を設定するときに考慮すべき事項として次のようなものが挙げられています。
- 休日: 担い手一人ひとりが週休2日(4週8休)を確保できるようにすること
- 時間外労働: 2024年4月から建設業にも適用された上限規制を守れる工期にすること
- 降雨日: 施工に必要な日数に「雨休率」を掛けて、雨で作業できない日を見込むこと
- 猛暑日: 夏にWBGT(暑さ指数)が31以上になる時間帯の不稼働を考慮すること
- 準備と後片付け: 施工そのものとは別に、準備期間と後片付け期間を確保すること
時間外労働の上限は、厚生労働省の「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」によると、原則月45時間・年360時間です。「繁忙期は残業でなんとかする」前提で組んだ工程表は、もう成り立ちません。
こうした条件をそのままAIへの指示に書き込むのが、この記事の方法の中心です。
手順1:工種と順番の骨組みをつくる
まず、工種の一覧と順番、それぞれの標準的な日数を出させます。ここでは日付はまだ入れません。
プロンプト例:「あなたは中小建設会社の現場監督です。木造2階建て住宅(延床約30坪)の新築工事について、着工から引き渡しまでの工種を、施工順に一覧にしてください。各工種に、標準的な作業日数と、前に終わっている必要がある工種(先行作業)を付けてください。表形式で、列は『No/工種/日数/先行作業』にしてください。」
出てきた表は、自社の過去の工程表と見比べて、抜けている工種や日数の違いを直します。AIの日数は一般論なので、自社の職人の実力や、いつも頼む協力会社の段取りとは必ずずれます。
過去の工程表がExcelにあるなら、工種名と日数だけを貼り付けて「この工程表をもとに」と頼むと、自社の実績に近い骨組みになります。その際、施主名・住所・金額は消してから貼り付けてください。
手順2:休日・雨天・猛暑の条件を入れて日付を割り付ける
骨組みが固まったら、着工日と条件を渡して日付を入れさせます。
プロンプト例:「上の工程表に日付を割り付けてください。条件は次のとおりです。着工日は2026年11月9日。土曜日・日曜日・祝日は休み(4週8休)。年末年始は12月27日〜1月4日を休みとする。雨で作業できない日を見込んで、屋外作業の工種には日数の2割の予備日を加える。準備期間を着工前に5日、後片付け期間を引き渡し前に5日とる。列は『No/工種/開始日/終了日/稼働日数/先行作業』にして、Excelに貼り付けられるタブ区切りで出力してください。」
「2割の予備日」は説明用の仮の数字です。実際の雨の見込みは、地域や工種、季節によって変わります。自社の過去の工事で、雨で何日止まったかを使うのがいちばん確実です。夏の工事なら、屋外作業の日数に猛暑日の不稼働を足すよう条件に加えてください。
AIは日付の計算を間違えることがあります。特に祝日と年末年始は見落としやすいので、出力された日付は必ずカレンダーで数か所確かめてください。
手順3:Excelでバーチャートにする
タブ区切りで出力させた表は、Excelにそのまま貼り付けられます。そこからバーチャート(横線式工程表)にするには、次の流れが簡単です。
- 日付の列をつくる: 表の右側に、着工日から1日ずつ日付を横に並べる
- 条件付き書式でバーを描く: 「開始日以上かつ終了日以下」のセルに色が付くよう設定する
- 休日を色分けする: 土日祝の列をグレーにすると、稼働日の数え間違いに気付きやすくなる
条件付き書式の数式がわからなければ、それもAIに聞けます。「B列に開始日、C列に終了日、1行目に日付が並んでいる表で、期間内のセルを塗る条件付き書式の数式を教えてください」と頼めば、そのまま使える式が返ってきます。
Microsoft 365の契約によっては、Excelの中でCopilotに条件付き書式や数式を作らせることもできます。利用には対応するライセンスが必要です。
手順4:協力会社向けの週間工程表に切り出す
全体工程表ができたら、協力会社や職人に配る週間工程表をつくります。全体の表をそのまま渡すより、「来週、誰が、どこで、何をするか」だけに絞ったほうが伝わります。ここは競合の記事でほとんど扱われていませんが、AIが最も手間を減らせる部分の一つです。
プロンプト例:「上の工程表から、11月16日〜11月20日の週の作業だけを抜き出してください。協力会社ごと(基礎業者・大工・電気業者)に分けて、日付・作業内容・作業場所を表にしてください。最後に、この週に重なる作業と、搬入の段取りで注意すべき点を3つ挙げてください。」
同じ表を使って、協力会社への連絡文の下書きをつくることもできます。連絡文の書き方は「建設業のChatGPT活用アイデア10選」で例を紹介しています。
手順5:遅れたときの組み直しに使う
工程表は作って終わりではありません。雨や材料の遅れで予定がずれたとき、AIはどこに影響が出るかを洗い出すのに役立ちます。
プロンプト例:「上の工程表で、外壁工事が雨で3日遅れました。後ろの工種にどう影響するかを示し、引き渡し日を変えずに済む組み直しの案を2つ出してください。ただし、休日出勤と1日の作業時間の延長は使わない前提にしてください。」
最後の一文がポイントです。条件を付けないと、AIは「休日に作業する」案を平然と出してきます。残業と休日出勤で吸収する案を最初から除外することで、上限規制の範囲で現実的な案だけが残ります。
ネットワーク工程表やクリティカルパスはどうするか
工種どうしの前後関係(先行作業)を手順1で表にしておけば、AIに「この工程のクリティカルパス(遅れると全体の工期が遅れる工種の連なり)を示してください」と頼むことができます。
ただし、ネットワーク工程表の図そのものを生成AIにきれいに描かせるのは、現時点では得意ではありません。中小の現場では、バーチャートに先行作業の列を足し、クリティカルパス上の工種だけ色を変えるほうが、手間に見合った成果になります。
専用の工程表ツールとの違い
AIで工程表をつくる専用ツールも増えています。汎用のChatGPTと比べると、次のような違いがあります。
| 種類 | 費用の目安 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| ChatGPTなどの汎用AI+Excel | 無料〜月3,000円程度 | まず試したい。工程表の様式を今のまま使いたい |
| ちょこっとガント | 無料プランあり。有料は月980円〜(公開ページの表記) | 工事内容を入れてガントの下書きを手早くつくりたい |
| コンクルーAI(工程表AIエージェント) | 月9,900円(税別)〜 | 見積書や過去の工程表をもとに自動生成したい中小建設会社 |
| 施工管理システムの工程機能 | 月数万円〜 | 写真・日報・原価まで一つのシステムで管理したい |
出典: ちょこっとガント/コンクルーAI 工程表AIエージェント(プレスリリース)。料金は2026年10月時点の公開情報です。契約前に各社の公式情報を確認してください。
おすすめは、まず汎用AIとExcelで2〜3現場つくってみることです。どこに時間がかかっているかが分かれば、専用ツールが必要かどうかを判断できます。費用の考え方は「建設業のAI導入費用はいくら?」にまとめています。
よくある質問(Q&A)
Q. 無料版のChatGPTでも工程表は作れますか?
A. 作れます。この記事の手順1〜4は、無料版でも試せる内容です。ただし、長い工程表や過去のExcelファイルを何度も読み込ませると回数の制限にかかることがあります。毎日使うようになったら有料版を検討してください。
Q. AIが出した工期を、そのまま発注者に出してもいいですか?
A. そのまま出すのは避けてください。AIは現場固有の条件を知らず、日付の計算も誤ることがあります。改正建設業法で受注者側も著しく短い工期での契約が禁止されたため、最終的な工期は必ず人が確認して決める必要があります。
Q. 図面や見積書をChatGPTに入れても大丈夫ですか?
A. 施主名・住所・金額など、外に出せない情報は消してから入れてください。会社としてのルールの決め方は「建設業のChatGPT活用アイデア10選」の後半で解説しています。
Q. 公共工事の工程表にも使えますか?
A. たたき台づくりには使えます。ただし、発注者が求める様式や、工期の設定に関する指示がある場合はそちらが優先です。「工期に関する基準」の考え方に沿っているかも合わせて確認してください。
Q. 毎回プロンプトを書くのが面倒です。
A. 一度うまくいった指示文を、社内の共有フォルダに「型」として保存しておくと、次からは着工日と工種を差し替えるだけで済みます。AIを社内に定着させる工夫は「建設業でAIが「使われない」を防ぐ」で詳しく紹介しています。
まとめ
AIで工程表をつくるときのポイントは、休日・雨・猛暑・準備と後片付けといった工期の条件を、指示文に書き込むことです。条件を渡さなければ、AIは理想的な日数の表を返すだけです。
骨組みをつくる、日付を割り付ける、Excelでバーチャートにする、週間工程表に切り出す、遅れたら組み直す。この5つの手順のうち、AIが最も手間を減らせるのは日付の計算と週間工程表への切り出しです。現場固有の判断と最終的な工期の決定は、人が責任を持って行ってください。
施工計画書や安全書類のつくり方は「施工計画書・安全書類づくりに生成AIを使う手順と注意点」、毎日の記録については「建設現場の日報・報告書作成をAIで自動化する方法」もあわせてご覧ください。
AI CRAFTは大阪を拠点に、関西圏の建設業のお客様を中心に、工程表や書類づくりなど現場の業務へのAI導入を伴走してご支援しています。サービス内容をご覧いただき、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。